通常、稽古では合気道は掛ける側つまり「取り手」側の指導をする為に、仕掛ける側の稽古が中心となり、皆さんの課題の持ち様も取り手側に意識が行ってしまいがちです。しかし、ここはひとつ立ち止まって見て、受ける側、つまり「受け手」についてもその重要性を認識して頂きたいと思います。
基本的に稽古で使われるものは、1.後方受身、2.固め技に対する前受身、3.前方回転受身です。しかし、これとて通常の技と同様に上達する道筋を自分なりに考え、課題を持って取り組む必要があります。
受身の目的は、頭部を守り、身体に対する局所的なダメージを受けないようにすることです。相手の仕掛けに対する強さが強ければ強いほど、受け手側がうけるダメージも大きいものになります。このダメージになるかもしれない仕掛けの強さを吸収して、自分のダメージとしないように受け身ができるようにならなければいけません。
取り手の仕掛けが強くなると、ダメージを受けないようにする方法は2つあります。1つは受け身をして逃れる積極的な方法。もう1つは技を掛けられないようにする消極的な方法です。相手の仕掛けが強いほど、受け側が体を硬くしてしまうということが後者の方法です。こうなると、相手も強度を増してくる場合があり、手首のようなところである場合は、怪我につながります。受け手の理想とは、どんな場合でも淡々と平然な顔をして取り手の技を吸収し、相手のスピードに合わせて受け身ができることです。この“相手に合わせて”ということは、取り手が受け手の攻撃に合わせて、技を仕掛けられるということと同じことです。
通常、技が掛かるまでには、①作り→②崩し→③技の仕掛け→④抑える、投げる という状態があるわけですが、取り手の重要なのは、確かに①~④のすべての部分です。しかし、受け手も④は重要です。どんなものでも受けられるという自信があれば、④までに体を硬くすることなく、①~③の動作に対して積極的に向かって行くことができるからです。しかし、④に不安感があれば、④までの中で体を硬くしてしまい、相手の④の動作ができないようにしようとするために、③ないしは②、ひどくなると①の部分から、例えば正面打ちひとつとっても満足に打ち込めないというとんでもないような状況になってしまいます。
①のところは、取り手が受け手に合わせる(合わせるように仕向ける)ということをする重要な部分ですが、受け手が取り手に合わせるということをしなければならないのが④の部分です。要は主導権(正確にはちょっと違いますが)を持っているほうに合わせることに変わりはないということです。相手との呼吸を合わせて次はどうなるかという状況を察知しながらその準備をし、受け身によりそのダメージを吸収するということを瞬時に行う必要があります。
取り手が、受け手の正面打ちを完全に打ち込まれてしまった状態から動かざるを得ないということが一般的に不利な状態であるのと同じように、受け身についても同じことが受け手に対して言えます。
また、④の受け身での相手に合わせるという訓練は、取り手の①の動作訓練に大きく影響を及ぼすのではないかと思っています。要は合わせるという“感”の養成だと私は思うのです。
初心者の方が取り手側を行う場合は、③④の部分が最重要点です。要は技の形や動き方を覚えようとするところから入るからです。しかし、上級者になるに従って、③④の前提にあるものが②であり、その前提にあるものが①だとわかってくるに従って、②、①と追求したくなってくるものです。そうすると最終的には心の持ち方の部分に目を向けて行くというのが、何事においても物事の流れとなるのではないでしょうか。
われわれはそこまで行き着かないとしても、①で必要となるのは“感”的な部分が大きいので、相手に合わせて動けるということの下積作業を十分積んでおかないとならないわけです。これは受け身のみならず、稽古中の色々な場面で積み重ねるべきことなのですが、受け身についても重要な部分であるということをおわかり頂ければ、今までと少し違った見方で、取り手と受け手の稽古の両面に目を向けて、積極的な稽古ができるのではないかと思い、メッセージを送らせて頂きました。
具体的にどうすればいいのかということについては、その指針となることを今後の稽古の中で行って行きたいと思います。
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judo (金曜日, 16 7月 2021 23:39)
interesting